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05年UEFAチャンピオンズリーグ決勝戦、戒厳令下のイスタンブール
リバプール、劣勢をジョンブル魂ではねかえし逆転優勝

久々に物凄い試合を見た。リバプールは前半を0−3の劣勢。一体だれが奇跡の逆転優勝を・・・遂げることを予想しただろうか!!

5月25日、04〜05年UEFAチャンピオンズカップ決勝戦は、トルコ・イスタンブールのアタチュルク・オリンピックスタジアムで行われた。リバプールがACミランをPK戦で破り、84年以来、5回目の優勝を果した。

イスタンブール行きは、始めからこれまでメッタに遭遇したことがない、“クレイジー”取材旅行の連続だった。パリからイスタンブールに飛ぶ経由便は、試合当日前後の便は総て、増設便を含めたビジネスクラス席も満席!!リバプールは2万席を割り当てられたがたちまちに完売。さらにその倍の数のファンがイスタンブールにチケットなしで飛んだと聞いた。

到着した空港はごった返していた。市内のホテルは満室。興味半分に聞くと、1泊300から500ユーロぐらいの部屋が空いていたのに過ぎない。タクシーは市内まで45ユーロと吹っかけてきた。親切な国営の観光案内所の叔父さんが、安くて便利な空港バスに乗ることを薦めてくれた。同じ距離でわずか3ユーロだった。このときばかりと地元は観光業者からスリ、押し売りまで徹底的に、中近東「ダマシイ」の商魂を見せて一儲けを企んで“カモ”を待ち構えていた。

毎回、時がくるとトルコ、モロッコはワールドカップ、五輪招致に立候補する。一体どこまで本気か分からないが、国の観光イメージアップを決め込んでいる。

また、トルコはEC加盟に必死だ。EC加盟国は東欧を加えて拡大されたが、キリスト教国のなかでトルコは国民の98%がイスラム教徒だ。フランスはトルコ加盟を拒否している。トルコ政府はイメージ崩しを嫌い、町中に警官を配し、スタジアム近辺は兵士で警備して、徹底的にフーリガン対策を昂じた。

このため市内は至極安全だ。

旧市内の最も観光客の訪れるブルーモスク、ソフィア寺院、元サルタンの宮殿だった現トプカピ博物館、バザールのあるスルタメナ地区に、通常ならウンカのようにたむろしているカーペット屋の客引き、カード売り子など、シツコイ物売りには大概の観光客は、かれらの猛攻にウンザリする。“ハエ”みたいに追っ払っても追っ払っても寄ってくる。

客が根を上げるまで・・・それがかれらの“ストリート・ビジネス”テクニックだ。

トルコ国内のUEFA杯優勝経験のある名門“ガラタサライ”クラブの本拠地がある、いわば銀座通りはリバプールファンで真っ赤!!市内のファン数は圧倒的にリバプールが多い。どこに消えたかACミランのファンが見えない。

新設されたスタジアムは、道路が数本外と結びつく、近辺に何もない荒野にポツンとある。一体何のために五輪用のスタジアムを建設したのか、外からきたものには到底理解できない発想だ。

ピッチでは珍しい人がTVの前に立っていた。すっかりスマートになったディエゴ・マラドーナだ。120kgの“チョー”肥満体から胃を小さく手術して元の体型に戻った。それにしても、引退した15年ぐらいの昔の選手に、世界中のカメラマンが先を争って連写する。そんな元サッカー選手はかれとペレ以外に存在しないだろう。

ここで試合を詳しく書いても意味がないので省略する。

マルディは7回目のチャンピオンズリーグ決勝試合で、決勝の最速ゴール52秒でミランが最高のスタートを切った。

続く39分、待望の追加点をカカ、シェフチェンコ、クロスを右サイドから入れると、ファー再度から上がってきたクレスポが至近距離2点目を追加した。

44分、カカが前戦に真っ直ぐなスルーパスを出し、クレスポがDFラインの裏に抜けだした。前進するGKドゥデクの頭上を越すループシュートを決め、ミランは前半を3―0で折り返した。

真っ赤に埋まったリバプールファンも、「こんなはずでは!?」我が目を信じられないような試合展開に、ただ呆然として沈黙。

後半、すでに名立たる守備の堅固な「カテナチオ」での後半を封じ込み作戦が突如乱れた。あれほど華麗にプレーしてきたACミランの中盤が、リバプール3バック、中盤に幅を持たせてきた布陣が機能を始めると足が止まった。

54分、リバプール「奇跡の6分」が開始されたが、ACミランにとっては「魔の6分」だった。

ジェラルドのヘディングシュートが決まる。その2分後、シュミシェルが放ったボールは、20m距離を飛び強烈にネットに突き刺ささった。リバプールファンは蜂の巣を突付いたような大騒ぎ。リバプールの勢いは止まらない。

60分、ゴール前でジェラルドが背後からガトゥーゾに倒された。アロソンのPKをジダにブロックされたが、撥ね返りを決めて同点!!試合を振り出しに戻した一瞬だ。

その後、両チームともゴールを奪うこともできず、試合は大会史上13回目の延長戦に突入したが、これも決着はつかず。PK戦でミランは最初のセルジーニョ、ピエロが外し、最後のシェフチェンコもドゥデク、変形な身体をクニャクニャ動かすスタイルに幻惑されて外す。悪いのはオーケストラではない。悪いのは「指揮者だ」と言われるが、この言葉はサッカーチームにそのまま当てはまる。

古豪リバプールの復活は21年ぶり。スペイン人のラファエル・ベニテス監督就任1年目にして、5回目の欧州の頂点に立った。

(望月次朗)

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