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中国陸連
北京五輪への道

中国はアテネ五輪で、中国五輪委員会の掲げる輝かしい目標を達成。史上最高32個の金メダル獲得した。アメリカ、ロシアに次ぐ,文字通り世界のスポーツ大国に躍進を遂げた。その土台になる中華人民共和国運動大会、簡略して「全中国運動大会」と呼ばれる。全土から各省、解放軍らを含む31地区代表選手が参加。南京で開催された。この大会はかつては五輪以上に重要とされ、4年に1度に各省で開催された。開催地は各省らの名誉、誇りを賭けて、五輪並みの巨大な各スポーツ施設を建設、激戦を繰り返してきた。南京でも市外南の新開発地区に、とてつもない巨大スポーツ施設が完成した。この大会中、中国陸連副主席、理事Luo Chaoyi 博士(45歳)、中国若手スプリンター強化養成に契約を済ませたマイケル・ジョンソンらに、北京五輪を目指した一連の動きを訊いた。

着実に進む開かれた強化策

Luo Chaoyi 博士談(元槍投げ選手、最高記録68m)

「北京五輪は国家プロジェクトのひとつとして、国の威信を賭けて成功を期待されていますが、正直なところ、五輪メインイベント陸上競技で大きな結果を期待されても困る(笑う)長年の若手の強化策が着実に成功して、アテネでは110mHの劉翔とわれわれも驚いた女子10000mで優勝した?慧娜らを始め、男子20,50km競歩で5、4位、女子5000,10000mで8,6位、女子ハンマー投げで7位に入賞しています。かれらはまだ若く、北京五輪ではさらに大きな飛躍を期待できます。だからといって、アテネ以上に陸上競技で飛躍的な結果を出せ!金メダルを量産せよ!と、かなり無茶な非現実的な声も出ていますが、中国陸上選手がアメリカ、ロシア選手に対抗できる力はありません。中国陸連の北京五輪目標は、アテネ五輪同様に2個の金メダル獲得と、10種目で何色でもいいから3〜5個のメダル獲得、さらに約20人のファイナリストを掲げています。中国選手が到底太刀打ちできない種目もありますが、活躍ができそうな種目に重点的な強化策を取って、これから短期間に最大の効果を挙げるように努力を続けたいと思います。この努力が北京五輪だけのものではなく、中国陸上競技の将来につながる長期的な視野にたってのことです。

男女別に将来性のある種目を挙げるなら、劉翔のアテネ五輪優勝の影響が強い110mHには逸材が多い。サブ14秒が10人以上がひしめき合っています。劉翔に次ぐ選手を期待したい。この種目に関しては、選手選考に頭が痛いほどです。NBAでプレーする姚明同様に、劉翔の活躍は中国のあらゆる分野で、中国人でもやれば世界を制することができると、強烈なインパクトを与えました。

中国五輪協会の重点的な強化策を取っているのは、体操、卓球、水泳など、中国選手が伝統的にスキルを必要とされる得意なスポーツを中心に重点的にメダル獲得を狙っています。

陸上競技もこの中に加わっています。陸上競技では約200名の男女の選手を選考、メダル、入賞可能な種目、男子は110mH、マラソン、20,50km競歩、砲丸投げ、4x100,4x400mリレー、女子は100,400mH、5000,10000m、マラソン、ハンマー投げなどが考えられます。

いずれにしても、現状では男子より女子選手のほうが世界トップレベルに近い種目が多い。

男子の長距離トラック種目で、世界的なトップレベルに追いつく可能性は、短距離と比較するとまだ少しのチャンスが残されていると思う。特に、マラソン選手の育成に全力を尽くすため、昨年から接触のあるガブリエラ・ロザ(イタリア)に一任する方針です。私自身、スプリント、110mHを含めて、中国選手が国際的なトップレベルのレースで勝てるとは思っていなかった。孫海平(50歳)コーチの賜物ですが、劉翔がアテネ五輪で優勝した事実は、中国全土を“アッ!”といわせた快挙ですね。中国人のスプリントの概念を一新する画期的なことです。五輪に向けて、さらに将来に向かって躍進するために、外国人コーチの導入を進めています。その一環として、やはり昨年から接触があったマイケル・ジョンソン、かれのコーチだったクライ・ハード(72歳)に、4選手を北京五輪まで預けて指導して貰う体制ができました。

劉翔は北京五輪最大の星

4年に1度開催される「全中運動大会」は、選手発掘にまたとない機会です。劉翔もエリートスポーツ学校で110mHを習得。18歳でこの大会に出場。優勝して、頭角をグングン伸ばしてきた。これらの学校システムそのものも大きく変化の兆候が見られ、いまやスポーツ専門校では生徒が集まらない。特に、両親が子供をスポーツ専門学校に送るのを避け始めたので、どこのスポーツ専門学校でもバランスある教育、文武一体のシステムに変化しています。この大会は中国選手にとっては、かつては実も名誉も掛かった五輪以上に大切な大会でした。ある省では優勝選手には家を一軒与えるところもあるらしいが、それは土地が安いところ(笑う)。そんな風潮がいまだに残されている省もあると聞きましたが・・・。ある選手はヘルシンキ世界選手権より大切と考え、ピークをこの大会に合わせてきた選手もいると聞いている。また、ある選手は短期間に得点稼ぎに何種目も出場された事実もある。しかし、国全体の経済体制も時と共に徐々に変化して、世界観が広範囲になってきました。NBAのスター選手Yao Mingの出現、劉翔、ダイビング五輪連続優勝の田亮選手らのコマーシャル活動が容認される時代です。個人的な商業活動の範囲が拡大されて自由化されてきた。例えば、劉翔選手の場合、レース賞金、出場料などで得られる収入の10%は協会が受け取り、かれのコーチが10〜15%、そのほかに少しと、選手自身は70%の収入になる。そこから上海の税金が支払われるだろうと思う。国が選手発掘にかけた投資を考慮すれば、劉翔がその一部を協会に支払うことは当然。その金が次代の選手にまた投資されるわけです。しかし、かれらが個人的に商業活動で得る収入、例えば今大会のスポンサーになっているコカコーラ社との契約金は全てかれのものです。陸上選手の目標が、中国でも確実に西欧諸国と同じようなシステムになってきました。ある人たちは、今回は北京五輪国内における前哨戦とも呼んだりしたし、陸上、柔道など一連のスキャンダルが発生して汚点を残したが、複雑な多くの問題を抱えた勝利至上主義が、最悪の方向に放出された形です。ドーピング問題は、これまで苦い経験があるので徹底した指導と厳罰で対処します。確かなことは、中国陸上競技は進歩しています。来年のジュニア世界選手権、北京五輪で新しい中国の姿を出したいものです。」

中国の短距離選手を強くできる

南京で開催された第10回全中運動大会の主要競技場は7万人収容の新設スタジアム。テニス、水泳、室内多目的など、巨大な新開発土地に巨大な施設が建設されたが、観客はガラガラ。中国のスポーツスーパースター劉翔が出場した夜、2万人以下の観客数。そのほかの日は、ほとんど関係者のみだった。南京では陸上競技は花形種目ではない。北京五輪は、国の威信を賭けた国家的な大事業だ。劉翔のアテネ五輪110mH優勝によって、意外にも中国短距離選手の才能発掘に改めて注目が集まった。また、中国の商業自由化がスポーツの世界にも拡大され、マイケル・ジョンソンの会社に北京五輪まで選手育成プログラムが任されている。かれらの方針を訊いた。

「われわれは中国陸連の短距離コンサルタント。われわれの短距離に対するノウハウを中国選手に同じようなプログラムで昨年の2月ごろからコーチと一緒に試験的に始めた。契約は北京五輪まで。現在4人選手を見ている。100m周佳敏(20歳)、200m楊糶祖(23歳)、400m姜波、400m胡成江(17歳)らがいる。中国陸連の指導者も含めて、アジア選手のスプリントの才能は、欧米の選手と比較して身体的に劣ると信じている印象を受けた。しかし、中国はかつて、三段跳び、走り高跳び、10種目競技、たくさんの女子選手が投擲などでも活躍している歴史的事実が証明している。中国は巨大な国。NBAでアメリカ選手に劣らない中国選手の活躍の例もある。世界トップクラスの体操、卓球などの種目ではエイジシステムが確立されて、選手発掘から育成強化まで一貫したシステムが現存している。要するに、短距離に適切な身体能力チェックをわれわれが行い、身体的な才能発掘をしてから、われわれの練習プログラムで選手育成をしている。昨年の2月からテキサス州のワコ市で、かれらのコーチと一緒に合宿生活をしている。非常に短期間だが、選手もわれわれも言葉、文化の違いに戸惑いながらも、短期間で個人記録をすべて破ってきた。もちろん、選手はわれわれのトップ選手のグループ、大学選手とも違う特別扱い。現在のかれらの力で、トップ選手との練習参加は。弊害があれど得ることはないだろう。われわれがコーチすることによって、即興的な結果を期待していない。これらの努力が中国陸連のスプリングボードに成ればと思っている。短距離に中国人が身体的に劣等があるとは思えない。ただし、何事も一夜で成功を期待できない。時間が掛かるだろうが、決して不可能でありえない。その努力が報われる日を信じています。」

(05年月刊陸上競技社12月号掲載)

(望月次朗)

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