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恒例のロンドン「銀河集団」レース、記録は?

ロンドンレースディレクター、元10000m世界記録保持者のデイビッド・ベッドフォードは、毎年決まり文句でこう言う。「a strong field」、「the strongest ever」と現実に世界トップ男女選手を豊富な資金力でかき集めて、これでもかと言わんばかりに「銀河集団」を得意げにPRする。にもかかわらず、そう簡単に世界記録、素晴らしいレースを作ることはできない。そこがマラソンの摩訶不思議なところである。非常に「人間的なスポーツ」と思うのはぼくだけではあるまい。ロンドンでは男子世界最高記録が最近出ていない。地元のヒロイン、ポーラ・ラドクリフのため、主催者はそれまで自画自賛した「女子だけ」の純潔レースを自らの手で汚し、3人のケニア男子をペースメーカーにつけて、驚異的な2時間15分の世界記録を樹立した。この前例のない男子ペースメーカーつきの世界記録に、日本陸連は、世界最高レベルの日本女子マラソンをプロテクトする意味を含めた、一言の抗議声明を発することもしなかったは残念だ。

トップ選手に4億円とか言われる資金力で、今年も男女ともに「銀河集団」顔見世興行ができるメンバーだが、好レース、記録への期待は予想が難しい。最も人気のあるハイレ・ゲブレセラシエ(エチオピア、2時間5分56秒)、世界記録保持者のポール・タガート(ケニア、2時間4分55秒)このライバル同士は絵にも文にもなる。かつての世界記録保持者ハリッド・ハヌーチ(アメリカ、2時間5分38秒)、2連勝を目指すフェリックス・リモ(ケニア、2時間6分14秒)、2年前優勝、昨年2秒差で2位のマーティン・レル(ケニア、2時間6分41秒)、世界選手権2連勝のジュード・ガリブ(モロッコ、2時間7分02秒)、アテネ五輪優勝者のステファノ・バルディーニ(イタリア、2時間7分22秒)、昨年のNYマラソン優勝者のマリルソン・ゴメス・ドス・サントス(ブラジル、2時間8分48秒)らが目白押しだ。このメンバーなら天候しだいだが、少なくともサブ6分を期待したい。

優勝候補筆頭は、ベルリン、福岡で圧勝したハイレ・ゲブレセラシエになるだろうが、かれは雨に濡れた道路を走るのが弱い。タガートは2年ぶりのレースだが、彼ほどの選手になると途中棄権か、そこそこレースをまとめる力がある。リモ、レルらは間違いなく、上位に入ってくるだろう。ガリブ、バルディーらは、このような大きな大会で勝ったためしがないが、世界選手権、五輪優勝者の顔見世だ。「銀河集団」レースは記録より、ライバルに勝つレースとなるので世界記録への期待は薄いだろう。

一方、女子選手は、野口みずきがアキレス腱痛で出場辞退したが、アジア大会で独走優勝した周春秀(中国、2時間19分51秒)、昨秋のシカゴで優勝したベルハネ・アデレ(エチオピア、2時間20分42秒)、2位のガリナ・ボゴモォヴァ(ロシア、2時間20分47秒)、コンスタンティナ・トメスク―ディタ(ルーマニア、2時間21分30秒)、ゲタ・ワミ(エチオピア、2時間21分34秒)、ローナ・キプラガト(オランダ、2時間22分22秒)。そしてトラックのトップランナー、イサベラ・オチチ(ケニア)がマラソンデビュー戦だ。優勝候補筆頭は、ドーハ・アジア大会で独走優勝した周春秀が、調整がまともならアデレ、ボゴモロワ、キプラガトらと激戦になろう。ベテランのワミ、デビュー戦のオチチラも楽しみだ。やはり野口の故障が興味を半減している。優勝タイムはサブ20分か?

 
(望月次朗)

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