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世界陸上直前! 男子10000m ケネニサ・ベケレ Kenenisa BEKELE
史上屈指の天才ランナー 3連勝に挑戦、兄弟で2冠を!

エチオピアは自他ともに誇る世界最強「長距離王国」だ。その歴史は裸足の王様<Aベベ・ビキラから始まる。25歳と若いケネニサ・ベケレが、歴代の英雄、マモ・ウォルデ・、ミルツ・イフター、皇帝<nイレ・ゲブルセラシェらと比較してもまったく遜色ないキャリアで伝統を背負っている。

ベケレはアテネ五輪10000m優勝、世界陸上10000m2連勝、世界クロカン5年連続2冠など世界大会で18個の金メダル獲得。5000m(12分37秒35)、10000m(26分17秒53)の世界記録保持者だ。トラックで力の衰えたゲブルセラシェの後継者として、伝統を継承する史上屈指の万能天才ランナーだ。

ケネニサの5歳違いの弟・タリクも世界トップクラスの長距離選手だ。ケネニサの年代記録をことごとく破り、ジュニア世界選手権5000m優勝者だ。この2人が大阪世界陸上5000m、10000mで兄弟優勝を狙う。ベケレ兄弟の出身地は、史上最強女子長距離選手のデラルツ・ツル、彼女の従姉妹であるディババ姉妹らと同じ。首都・アディスアババから南250kmの位置にある標高2800mの高地・ベコジ村だ。この村の体育教師、シンタイユ・エシェツの手腕によって、素質発掘、指導されて育ってきた背景がある。彼はケネニサとの出会いを「私が教えた子供の中で、最も素晴らしい素質を持った子だった。すでに16歳の頃から世界のトップクラスに成長すると予測できた」と説明してくれた。

エチオピアのベケレ世代の長距離選手は、ゲブルセラシェの影響を少なからず受けて成長してきた。ベケレは世界中で皇帝≠ニ称されたゲブルセラシェ打倒を目標に掲げてきた。ベケレが03年パリ世界陸上、04年アテネ五輪で優勝した時も経験豊かなゲブルセラシェがレースを引っ張り、ベケレ、シレヒ・シヒネ(エチオピア)らを先導。見事なチームワークでエチオピアの連続優勝を保ってきた。国の誇り、名誉のために走るエチオピア選手。単に高地民族の身体能力の有利さだけではない強さの秘訣のひとつがそこにある。

05年1月、結婚式を数ヵ月後に控えたある日、ベケレは婚約者のアレム・テシャレ(03年ユース世界選手権女子1500m優勝)と一緒に練習中、彼女が急に倒れて亡くなる悲劇が起きた。しかし、ベケレは悲しみを越え、2ヵ月後の世界クロカンで見事4連勝2冠を達成、精神的な強さを見せた。ベケレは「競技生活は短くパッと終えたい。走ることがすべてではない」と言う人生観の持ち主。「近い将来、弟のタリクが僕の世界記録を破るだろう」と気遣う優しさがある。

06年福岡世界クロカン優勝後、「来年から世界クロカンに出ない」と宣言したベケレだが、エチオピア陸連や国際陸連からのプレッシャーに屈し、今年も世界クロカン(ケニア・モンバサ)に出場。高温多湿の悪条件下で、残り800mで途中棄権して6連勝を逃した。しかし、「精神的なショック、肉体的な後遺症はない」とベケレは言い切った。

6月上旬、オランダのヘンゲロGP2マイルに出場、2位以下を3秒も引き離して8分13秒51で優勝。豪快な切れあるスプリントは健在だったが、意外に慎重なレース運びだった。それ以後、2試合を欠場している。世界クロカン後遺症からどこまで回復できるか。世界陸上10000m3連覇に向けて慎重に調整していると見たい。

ベケレは「理想的なのは弟が大阪で5000mを優勝、僕が10000mで3連勝することだ」と、兄弟での長距離2冠達成の夢を持って大阪にやってくる。

 
(大阪世界陸所公式ガイド掲載)
(望月次朗)

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