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ベケレ、史上6人目の長距離2冠制覇

ベケレは2連覇かがかかった10000m決勝レースをこう説明した。「調子は良かった。10000mはエチオピアのお家芸だ。エチオピアの国民が固唾を飲んでTVの前で応援してくれる。2連覇は至上目的だった。それだけにプレッシャーはあった。前回と同様にハイレ、シヒネらと一緒に走るので気が楽だったが、なにが起きるかわからないので細心の注意が必要だった。とにかく、まずひとつの責任を果たしてホッとしている。ハイレはマラソン選手。ハイレがトラック選手と互角に戦ったことは素晴らしいこと。残りの5000mは前回失敗しただけに、ベストを尽くしてがんばる」

今回も前回に続いてベケレとの最後のスプリント争いで負けて2位だった、シレシ・シヒネの無念の表情が印象的だった。かれは2年ぐらい前から北京五輪女子長距離2冠を獲得したティリネシュ・ディババと同棲、この2人は今秋、アディスで華麗な結婚式を挙げることになっている。

五輪陸上競技最終日、男子5000mでケネニサ・ベケレ(エチオピア、26歳)が、独走態勢で並みいる強豪をハイスピードで潰し長距離2冠を獲得した。このレースは力でグイグイ押すベケレの強さを示す、めったに見られない圧巻のレースだった。これは史上6人目、28年ぶりの快挙だった。サイド・アウイタ(モロッコ、84年五輪優勝)の持つ13分5秒59を大幅に破る12分57秒8の五輪新記録で圧勝した。これまでハンネ・コレマイネン(1912年、フィンランド)、エミール・ザトペック(1952年、チェコ)、ヴラディミール・クーツ(1956年、旧ソ連)、ラッセ・ヴィレン(1976年、フィンランド)、ミルーツ・イフター(1980年、エチオピア)らの先人が達成して来た。ベケレは、「弟のタリク、チェルコス(ジュニア世界選手権5000m優勝者)らが前半を引っ張ってくれた。アテネ五輪の失敗を繰り返さないためにも、高速ペースでライバルを潰す作戦が成功した。後半、1周60秒ペースで回ればライバルが潰れ、勝てると読んだ。キプチョゲ、ラガートらのスピードランナーが要注意だったので、最後のスプリント争いは避けたかった。アテネで失敗した念願の長距離2冠獲得を果たしてホッとしている。ハイレを越えたと思ったことはない。かれの実績を尊敬しているし、かれの存在は大きい。ハイレは現役のマラソン世界記録保持者だ。単純なハイレとの比較は無意味だ。まだ、ぼくは若いので、将来、なんども五輪、世界選手権優勝を続けて国のためにも歴史を作ってゆきたい」と語った。

ベケレは最後の1周を53秒80で回った。

 
(08年月刊陸上競技10月号掲載)
(望月次朗)

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