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女子800m、パメラ・ジェリモ、種目変更11レース目で五輪初優勝

パメラ・ジェリモ(ケニア、18歳)は、今季200,400mから800mに転向した選手。4月19日、最初の800mレースはナイロビで開催されたケニアのアフリカ選手権選考会。ジェリモの優勝記録は2分1秒2だった。800mに転向して2回目のレースが、アディスアベバで開催されたアフリカ選手権予選だった。3レース目が決勝。マリア・ムトラ(モザンビック)らを大きく引き離して1分58秒70の世界ジュニア新記録を樹立して優勝。初の国際タイトルを獲得して世界を驚かした。チューリッヒGLを最後に引退を表明し、21年間の長いキャリアを誇る史上最強の一人、中距離界のスター選手ムトラは、「アフリカ選手権で一緒に走ったが、あんな選手は見たことがない」と、驚いている。ジェリモは、「あのレースでムトラを破ったことが大きな自信に繋がった!」と言った。これを機にあれよあれよと言う間に、欧州のGL、GPで世界のトップ選手と対戦、無敗の成績を残して優勝候補筆頭で北京に乗り込んだ。そして、11レース目が五輪決勝。あっさりと史上9番目の1分54秒87を記録。3回目のアフリカ、4回目の世界ジュニア新記録を更新。大阪世界選手権の覇者ジャネト・ジェプコスゲイ(ケニア)、マリア・ムトラ(モザンビック)らに大差をつけて圧勝した。

この難しいといわれる800mで、しかも4ヶ月の短期間のキャリアで五輪初優勝は、世界の中距離の常識を大きく覆したと言えよう。

ジェリモが陸上競技に関わりを持ち出したのは、03年13歳の中学生のころ母親がアマチュアのランナーだったことから強い奨めがあったからだ。ジェリモはこう言う。「わたしのキャリアは始まったばかり。母親も現役のころは200,400mの選手だった。母親はスポーツを続ける経済的な余裕がなく中断しただけに、娘のわたしに夢を託した。五輪優勝は母親に捧げたい。わたしはもっと練習に励み、世界選手権優勝、五輪連覇、世界新記録樹立を達成したい」

ジェリモの出身地は、ケニアの中・長距離のメッカ、エルドレットに近いカプサベット。ここからジェプコスゲイ、北京五輪男子800m1位のウィルフレッド・ブンゲイ、現男子800m世界記録保持者のウィルソン・キプケター(デンマーク)を輩出した郷土だ。ジェリモによって、不滅の世界記録1分53秒28が更新される日を期待したい。ちなみに、ジェリモはチューリッヒGLで1分54秒03の史上3位の好記録で優勝。またもアフリカ、世界ジュニア新記録を更新した。

 
(08年月刊陸上競技10月号掲載)
(望月次朗)

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