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国際陸連のロードレース規格とは

なぜ、日本に「ゴールドラベル」レースがひとつなのか

ランニングブームが起きてから久しい。有り余ったエネルギーを「運動」によって消化することは、文明のバロメーターのひとつにもなっている。ひもじい思いで身体を動かす発想は生まれてこないからだ。健康志向も追い風になって、いまやロードレースは、雨後の筍のように世界各地で開催され、紛れもなく世界最大のスポーツに成長してきた。これらの世界的な発展を遂げ、世界陸連(IAAF)が新たにロードレース部門を設立。国際ロードレース規格を設定、大会ランクを金、銀、銅に分類した。09年、日本国内マラソンおよびハーフマラソンで国際陸連が設定した最高基準の『ゴールドレベル』レースは、琵琶湖マラソンが唯一のものである。国際陸連ロードレース担当者のショーン・ワーラス−ジョーンズにロードレースの諸問題を訊いた。

−「ロードレース」を明文化したのはいつからですか。
WJ−2007年の春、AIMSと共同して原案を作り始め、その年の秋にウディネで開催されたハーフマラソン世界選手権で公式に「ロードレース」の金、銀、銅の3ランクのラベル設定を発表しました。

−なぜ、このような標準化が必要となったのですか。
WJ−それまでは陸上競技のように、国際陸連が率先してロードレースのための世界的な規格を設定していなかった。世界陸連が標準レース規定を設ける必要性もそれほどなく開催され、早く言えば、国際的なルールもなく各レースディレクターが好き勝手に開催してきました。それはそれでよかったのですが、いまやロードレースは、世界一の巨大なスポーツに膨れ上がってきました。誰もが参加できる大衆的なスポーツに成長してきました。そこで世界陸連が公式に基本的な規則を設定することで、レースそのものの質を高め、円滑にレース運営などができるようにさまざまな分野で標準、規則化する必要になったからです。

http://www.iaaf.org/ の「Competition」 をクリック、さらに「Road Races」をクリックしてから)2009 IAAF ROAD RACE LABELS - REGULATIONS を参照のこと。

ここには現在世界中のロードレース金、銀、銅レベルのレースを月ごとに列挙。ロードレース規格が英仏語で掲載されている。また、男女ランナーのランク付けが記録によって掲載されている。最後に、レースディレクターのレース報告書がダウンロードできるようになっている。

−日本は自他共に認めるマラソン王国。マラソン、駅伝、ハーフマラソンなど、たくさんのロードレースが開催されているが、国際陸連は琵琶湖マラソンだけ最高の『ゴールドレベル』に認めていますがなぜですか。
WJ −この問題はいろんな方から指摘されました。(笑う)皆さんの気持ちがわからないわけではないが、国際陸連としては、ロードレースを3種類のランクに分類するための規定を設けています。従って、分類はどのようにレースが行われたか、各レースディレクターによるレース報告を受け、理事会がルールに従ってレベルのランクをつけます。この裁定は1年間有効のもので、毎年変わるケースも出るので永久的なものではありません。例えば、来年から東京マラソンがゴールドレベルにランクされる予定ですが、福岡、名古屋、大阪マラソンなど、素晴しいレース運営、高いレベルの国際レースを行っていますが、国際陸連のロードレース規定から外れる独自のレースを行っているためです。

−最も重要なことは?
WJ−規約を読んで頂ければわかることなのですが、大衆ランナーと一緒にランク付けされたエリートランナーが少なくとも男女5カ国から参加する。ゴールドレベルの招待選手は、男子マラソンならば2時間10分30秒、女子は2時間28分00秒、ハーフならば男子は61分30秒、女子は71分、ロード10kmは28分10秒、女子が32分10秒らの過去36ヶ月の記録が選手の出場条件になります。 AIMSか公認計測係によって計測されたコース、記録車、国際TV放映、ドーピングテスト、取材陣の対応などの諸条件をクリアーしなければなりません。3ランクの格付けは、諸々の評価基準が違ってきます。

−例えば、パリ・マラソン、リスボンハーフなど、取材陣に対してゴールドレベルにそぐわない対応をしているレースがありますが・・・、あれでもゴールドレベルとはおかしいのでは?
WJ−あまりにもたくさんのレースが世界に存在しています。まだ、われわれは完璧にすべてのレースを網羅しているわけではありません。レースディレクターが任意に書き込んだレースレポートを集計してチェックします。

−このロードレース規格はどんな効果がありますか。
WJ−レース規格を設定したことで、レースの質、運営のガイドラインができたことでさまざまな問題解消に役立っていることです。われわれが現場に行くこともありますが、それは現場でレース運営のアシスタントの役割が主な仕事です。

−ゴールドレベルに格上げできるのは、世界の男女トップランナー招待、賞金、設備、ドーピングテストなど、厳格な基準を満たすのは金持ちレースだけですね。
WJ−大衆を含め大規模なレースは、資金力がなければ安全かつ円滑なレース運営はできません。

−今後、ゴールドレベルレースをどのくらいの数に設定の予定ですか。
WJ−フル、ハーフマラソンを含めて22〜25レースが適当ではないかと思っています。 

 
(09年月刊陸上競技7月号掲載)
(望月次朗)

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