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熱戦に沸いたドーハ室内世界選手権

男子三段跳び、最後のジャンプで劇的な世界新

カタールの首都、ドーハの巨大な「アスパイア・ドーム」で第13回世界室内選手権大会が3月12-14日に開催された。気温零下の欧州から、熱風が吹く30度を超す暑さのドーハ空港に到着。室内よりむしろ屋外競技に適した気温だ。このカタール半島は、サウジアラビア側から突き出ている。国土の大部分は不毛な砂漠の平野だが、油田と世界最大級のガス田が半島から北の方向の海底に広がっているとか。要するに、カタールは典型的な中東の豊富な天然ガス、産油国だ。贅沢なオイルマネーで医療、教育が無償で社会制度も完備されている。閉鎖的なアラブ諸国では異色な、アラビア語、英語の全世界に向けた衛星TV局アルジャジーラを開局。また、陸上競技、自転車ロードレース、テニス、バイクGPなど、国際的なスポーツイベントを積極的に開催してきた。一時、カタールはケニア、エチオピア選手の国籍変更を好条件で強く推し進めた。元ケニア国籍のシャヒーン・サイフ・サイードは、現役男子3000m障害で7分53秒63の世界記録保持者だ。4年前、アラブ諸国で初めての第15回アジア大会を開催した経験から、五輪、サッカーのワールドカップ開催地にも立候補する計画があるとか。スポーツ施設が集中している一角にある巨大な会場は肌寒いぐらいにエアコンが効いていた。

参加国は史上最大の144カ国。日本からは男子60mに江里口匡史(早稲田)がただ一人の参加となった。

男子60m チェンバーズが初優勝

ドゥワイト・チェンバーズ(英国、31歳)が、吠えてゴール!前回は同着2位だったが、マイク・ロジャーズ(アメリカ,24歳)を抑え6秒48とタイムを延ばして初優勝。チェンバーズは03年薬物使用で2年間レース出場を禁止された選手。数年前から本格的に本職に復帰。ところが欧州陸上競技大会主催者は、薬物にかかわった選手に生涯出場を許可しない。また、英国五輪協会は薬物使用選手の五輪出場も認めない厳しい規約がある。このため、チェンバーズはIAAFなどの賞金の払い戻しなど多額の借金を抱えているが、賞金の掛る大きな大会出場の道はいまだに閉ざされている。一度はNFL,リーグラグビーにスプリントを生かして活路を試みたが失敗。かれは活躍することで世に訴える続けることが愉一の手段。晴れてプロ選手として生きる活路を詮索中だ。「優勝がすべてだ!それ以外はボーナス!」と大喜び。「レースは予選から決勝まで楽なレースはなかった。決勝ではスタートがやや遅れたのでかなり力んでしまった。(田舎の名もない大会しか出場できないので)左右に強敵と一緒に肩を並べて走るような経験が少ないので硬くなった。(苦笑)もちろん勝ったので大変にうれしい。優勝を狙ったのは、今夏バルセロナで開催される欧州選手権の前哨戦と思っていたから。今年の最大のターゲットは、欧州最速男になり、今日のように勝ち続けることだ。結果によって人の考えを変えることができると期待したい。ぼくにも家族があるので晴れて多くの大会に自由に出場できるチャンスを獲得したい」2位のロジャーズは「初めての世界大会のメダルを獲得したので良いとする。スタートは良かったが、この種目は距離が短すぎる。ぼくは100mの選手。今日のチェンバーズは強かった。」と脱帽。

男子60m 日本からただ一人の出場者、江里口

今大会から出場標準記録が高くなったことと、日本国内で高いレベルの室内大会が少なくなったこともあろうが、この時期トップクラスの選手は屋外シーズン前の基礎練習に多忙で室内大会を避けるような傾向が強い。日本から江里口匡夫(早稲田、21歳)が60mに出場したただ一人の参加者。予選1組を4位6秒75の自己新記録で通過し、タイムで拾われて準決勝に進出。この記録は7種目で優勝したブライアン・クレイ(USA,28歳)の6秒67という記録より遅い。翌日の準決勝に進出できたが、準決勝で6秒77とタイムを落として20位だった。








男子60mH ロブレス大会新で優勝、劉翔7位

世界記録保持者のデイロン・ロブレス(キューバ、24歳)、元世界記録保持者で故障上がりの劉翔(中国、27歳)、テレンス・トゥラメル(アメリカ,31歳)、デイヴィッド・オリヴァー(アメリカ、28歳)、ペーター・スフォボダ(チェコ、26歳)ら、おおよそ現在考えられる世界のトップハードラーが一堂に集結した見応えのある決勝だった。特に、因縁の現、元世界記録保持者同士の対決が注目されたが、ロブレスの圧勝に終り故障上がりの劉翔は7位と明暗を分けた。2年前、バレンシア大会決勝でピストルが鳴っても、なにを勘違いしたかロブレスは跳び出さず劉翔が優勝した経緯もある。今回、ロブレスは予選から快調に飛ばし、決勝でスタートが遅れたが、深くディップして2位のトゥラメルに100分の6秒差の7秒30で競り勝った。3位はオリヴァ―が7秒44。ロブレスは優勝コメントをこう残した。「決勝で世界記録を破りたかったが・・・。多くのキューバ人が期待した優勝ができた。かれらの期待に答えることができ、トップハードラーと闘って優勝したことは大変にうれしい。トゥラメルの調子が良かったし、彼のスタートは抜群に早いので写真判定に持ち込まれるような激戦になることは予測できた。かれとの対決は常に緊張する素晴らしいレース、好タイムが期待できる。勝った時、世界新記録のようにうれしかった。この優勝メダルは五輪金メダルと同様に大切なものと思っている。このメダルは従兄のヨリディスに捧げるもの。劉翔はまだまだ本調子ではない。かれが完全復帰するのを待っている」

2位になったトゥラメルは「7秒30以下(世界記録7秒30)を狙っていたが…、夏に世界新記録に挑戦したい」

劉翔は予選からそれなりに走っていたが、「脚にパワーがない」と言うように、決勝で7位に終わった。「準決勝後で左のアオキレスが痛かった。現段階で決勝進出できたのは満足だ。アスリートは良かったり悪かったりするもの。夏に完全回復したいものだ。今年はアジア大会で優勝を狙う」と、完全復帰を約束した。

男子棒高跳び フーカー、大会新記録で優勝

今季も好調を伝えられたレノード・ラヴィレニエ(フランス、24歳)が5.45mを跳んで予選通過ならず。決勝は、スティーヴン・フーカー(オーストラリア、28歳)が5.70,5.80mを1回でクリアー。マルテ・モール(ドイツ、24歳)が5.70mを2回目でクリアー。バーを5.85mに上げたがこれを3度失敗。この時点でフーカーの優勝が決定。ここからがかれの独断場。バーを一挙に大会新記録になる6.01mに上げて2回目にクリアー。続いて、世界新記録の6.16mに挑戦したが3回とも失敗して世界新記録にならなかった。「バーを世界新記録に上げてもナーヴァスにならなかった。大会新記録で優勝したことは大変にうれしい。この調子で成長できれば世界新記録も夢でないと感じるようになった。ジャンプする感じが非常に良い。6.16mのジャンプはそれほど良くなかったが、6.01mをクリアーした時の感触は良かったので、力はあの辺にあると認識している。もし、長い時間予選で力をセーブし、心身ともに新鮮な状態でジャンプできるなら世界新記録も不可能ではないと思う。」




男子砲丸投げ 3連勝のカントウェル、激戦を制す

カントウェルは、「決勝で2回目の投躑が終了した時点でランキングを見て、こりゃあ、激戦になる!と思ったね。案の定、今大会は5人が21mを投げ世界室内史上もっともハイレベルな戦いになった。なぜ、こんなことになったかわけがわからないが…、1回目に21.60mを投げてもなんとなく不安で満足できなかった。ちょっと力み過ぎた感じだったが、最終投擲で良い感じでまとまり3連覇が完成した。」と破顔した。

男子七種競技 クレイ、1年のブランクを感じさせない実力、貫禄の優勝

昨年、五輪後1年間競技から遠ざかったブランクを物とせず、ブライアン・クレイ(アメリカ、30歳)が6204点を獲得。ベルリン世界選手権の覇者トレイ・ハーディー(アメリカ、28歳)に20ポイント差をつけて優勝。クレイは激戦をこう語った。「きつかった!この2日間いろんなミスがあったが、なんとか勝ったのは幸いだった。今年の夏、チェコで開催される大会で世界記録に挑戦することに自信が沸いてきた。体調は万全だ。各種目に少しチューンアップするだけ。今回、棒高跳びと走り高跳びが良かった。」と早くも夏に向けての抱負を述べた。

男子800m ロンドン五輪まで勝ち続ける!

前回のバレンシア大会で無名のアブバケール・カキ(スーダン、21歳)が、男子800mで圧勝して一躍国民的な英雄として凱旋帰国した。その年ジュニア世界選手権で優勝したものの、初出場の北京五輪は予選落ち。ベルリン世界選手権では優勝候補筆頭に挙げられたものの、不運にも準決勝で転倒して失格。タイトル戦の熾烈な洗礼を受けた。GL、GPでは無類の強さを発揮しながら、不思議にもタイトル獲得にみはなされてきた男。陸上競技とは縁の薄いスーダンの首都のハルツームには、まともに整備された全天候の競技場(建設中とか)が整っておらず、冬はドーハで走り込み、大会前にはアディスアベバで高地合宿を行って調整してきた。予選から終始先頭に立ちレースをコントロール。決勝も完璧なレース運びで圧勝して連覇した。カキは「勝つために出場した。記録より連覇できたことが大切だ。スタートからプラン通りに自分のレースができた。この勝利は始まったばかり。今年はアフリカ選手権優勝が目標。出場するレースに勝ち続け、最終的にロンドン五輪で優勝することを目標に掲げている」と熱かった。

男子三段跳び 大口叩きの「悪童」ムタンゴ、大会唯一の世界新記録を樹立

大会最終日、最後の種目男子三段跳びで、今大会唯一の世界新記録が飛び出した。今大会、五輪優勝、世界選手権2位のネルソン・エヴォラ(ポルトガル、26歳)、世界選手権の覇者フィリップ・イドウ(英国、31歳)らが棄権したが、今季復活を果たして好調のクリスチャン・オールソン(スエーデン、30歳)、欧州室内で好調ぶりを実証したアニー・ダヴィド・ジラート(キューバ、26歳)らのキューバ勢、ムタンゴ、今季室内世界最高記録17.39mを跳んで、昨年欧州室内でも優勝経験のある室内にめっぽう強いファブリシオ・ドナト(イタリア、34歳)らの優勝争いが予想された。初回に17.23mを記録したオールソンは、足に痛みを感じて大事を取って3回以降をパス。優勝争いは、17m台を跳んだムタンゴ、ベタンゾス、ギラートの3選手に絞られた。

他の全種目が終了してもまだ熱い戦いが続けられ、ムタンゴが最後の跳躍に満を持したように、スピードに乗った助走から、スムーズでリズミカルな大ジャンプ。弾けるようにしてピットから飛び出し、電光掲示板に記録が表示される前、手応えを感じて大騒ぎ。慎重な計測後、掲示板に「世界新記録17.90m」(これまでの記録は、97年アリセール・ウルティア(キューバ)と04年クリスチャン・オールソンらの17.83m)と発表されるや、ムタンゴは、まだ、ベタンゾスの最終ジャンプが残されていたが、早くも国旗を振って優勝したようにはしゃぎ回る。「これからはおれの時代!おれの活躍の始まりさ!」と叫んだ。5回目に17.50mを記録、ヨアンドリス・ベタンゾス(キューバ、29歳)が初回に跳んだ17.69mを追って2位につけた。結局、ベタンゾスの最終ジャンプは初回の超えることはなく、ムタンゴの優勝が決定した。

ムタンゴは、「優勝ラインを17.60m位に置いていたが、初回にベタンゾスが17.69mを跳んだのでかなりのプレッシャーを掛けられた。正直言って、今日あんな記録が出るとは予測できなかった。しかし、昨年パリ室内で17.58mを跳んだのでその辺の記録なら跳べる自信は持っていた。これからおれの時代さ!例え、おれの記録がこれ以上伸びなくても優勝が最も大切なことだ!今年の欧州選手権、世界選手権、ロンドン五輪など、出場するすべての試合で勝ち続けたい」と勝利に徹することを宣言。ムタンゴは母親と抱き合い大喜び。世界記録保持者のオールセンも、ムタンゴをハグして新世界記録保持者を祝福した。こうして劇的なドーハ室内大会は終焉の幕を閉じた。

女子60m キャンベル-ブラウンが新鋭ジョーンズ-フェレットらを抑える

予選からヴェロニカ・キャンベル-ブラウン(ジャマイカ、28歳)、ラヴェルネジョーンズ-フェレット(ヴァージン諸島、29歳)の2人が抜きんでて好調だった。それぞれ準決勝を7秒07,05で無難に通過。決勝は、小柄なるディ・ザング・ミラマ(ガンビア、23歳)が飛び出したが、やはり3コースのキャンベル-ブラウン、ジョーンズ-フェレットが激しく争い、キャンベル-ブラウンがレース巧者ぶりを発揮して自己新記録7秒00で優勝。2位は7秒03でジョーンズ-フェレットが入り、史上初のメダルを島にもたらした。3位にはカメリタ・ジェター(アメリカ、30歳)が7秒05ではいった。

キャンベル-ブラウンは、「優勝を目指して出場した。ドーハに来る前から、十分な練習を消化して優勝モードにセッティングしてきた。半端な気持ちで勝てるほど甘くはない。距離が短いだけに、集中力と洗練されたテクニックが必要なレースだ」 また、2位のジョーンズ-フェレットは、「アメリカにきたのは13歳の時。わたしは島出身では史上初の世界選手権メダルを獲得して非常に嬉しい!今季、10秒台で走ることが目標です。」

女子1500m、史上最年少優勝者ゲザヘグネ

カルキダン・ゲザヘグネ(エチオピア、18歳)は、前を行く優勝候補の同僚ゲレテ・ブルカ(24歳)をホームストレッチに入り、一挙に抜き去って4分8秒14で優勝。室内世界選手権史上最年少の18歳310日を達成。ブルカの連勝を阻んだ。これまでの記録は1995年、ガブリエラ・ザボー(ルーマニア)が19歳で3000m優勝したものを上回る若さだ。ゲザヘグネは予選で転倒したにもかかわらずトップ通過。ゲザヘグネの優勝の喜びの声。「まさか勝つとは思わなかった!神に感謝したい!本格的に走り始めてまだ3年目。どこで前に出ようか、予選で転倒したので怖かった。この種目は私に適している。これからたくさんの金メダルをエチオピアのために獲得したい」

女子棒高跳び イシンバエワ室内世界選手権でも敗れる

イシンバエワ(ロシア、28歳)は、予選通過も危なかった。4.55mから初めたが、3回目にやっとクリアーして予選トップで通過した。しかし、決勝では不調がそのまま正直に結果に表れた。4,60mを一発でクリアーしたが、4.75mを3回失敗して4連勝ならず。メダルなしの4位に降格。泣き出しそうな表情を浮かべた。ベルリン世界選手権に続いてタイトルを失った。イシンバエワは、「なぜ跳べなかった原因がわからない。この種目にはこんなことが良く起きる。わたしにとって、昨年と今年は良い年ではないような気がするが、夏には世界記録に挑戦します」と、自分に言い聞かせるように語った。今季好調のファビアナ・ミューレル(ブラジル、29歳)、ベテランのスヴェトラナ・フェファノワ(ロシア、30歳)が4.80をクリアーしたが、この高さを一発でクリアーしたミューレルが初優勝を飾った。ミューレルは、「23年間の室内世界選手権で、わたしがブラジル選手で最初の金メダルとか。夢が叶って大変に嬉しい!イタリアでイシンバエワと同じキャンプで練習をしている。彼女から多くのことを習ってきた。これから4.85,4.90,5.00mと記録を伸ばしてゆきたい」と、めったに笑顔を見せないミューレルがにっこり。



女子砲丸投げ2強対決、オスタプチュク勝利

初優勝したナゼヤ・オスタプチュク(ベラルシァ、30歳)は、「メダル獲得を予期していたが、正直言って優勝すると思っていなかった。これまで3度2位の経験があったが、やっと運が回ってきた感じ。金メダルは夢のようだ。勝ったうえに大会新記録(これまでの記録はイリナ・コルザネンコの20.55m)を樹立して大変に嬉しい。調子が良かったが2,3,4回とファウルが多く、最終投躑で良い記録がでて満足だ」また、2位に甘んじて2連覇を逃したヴァレリー・ヴィリ(NZ、26歳)は、「数年前、常にわたしがオスタプチュクの後塵をはいしていたが、最近は彼女との位置が入れ替わって勝っていた。また、われわれのポジション争いが変わるかもしれない。今日はわたしの日ではなかった」と苦笑していた。

女子60mH、ロロ・ジョーンズ念願の初優勝

「不運のハードラー」と呼ばれ、実力と人気の高いロロ・ジョーンズだが不思議とこれまで五輪、世界選手権でツキに見放されてきた。今回も準決勝を100分の1秒差で運よく通過し決勝進出が決まった。しかし、決勝は別人のごとくうって変わった爆発的なスタート。見事なハードリングで、1台目から2位以下を完全に離して0.14秒の史上最大のマージンをつけてゴール。7秒72の大会新記録で優勝。この記録はゲイル・デヴァーズの持つアメリカ記録を破り、史上第3位の好記録で史上初の連覇を飾った。ゴール直後、何度も掲示板に目を向け、彼女自身が驚くタイム、世界タイトルを連覇して半信半疑の反応だった。「キャリアべストのレースだった!五輪の転倒、09年の故障など悪夢の日々だったが、これで再びレースを楽しむことができる。感極まって言葉にならない。」







女子五種目、ジェシカ・エニス

昨年の世界選手権で初優勝。地元ロンドン五輪最大のホープに上昇したジェシカ・エニス(英国、24歳)。今季、60mhで英国新記録を樹立した。エニスは北京五輪7種優勝者、ナタリア・ドブリンスカ(ウクライナ、28歳)、3位のタチヤナ・チェッルノワ(ロシア、22歳)らと競り合い、4937点の大会新記録で優勝。カロライナ・クリュフトの持つ大会記録4933点を4点更新。史上3位に上がってきた。エニスは、「北京五輪メダリストを破って最高のフィーリングだ。これで世界記録を破る可能性に自信がついてきた。」









4年前に開催されたアジア大会を思い出して、ドーハでは世界室内は人気がないだろうと決めてかかったが、意外にも連日多くの観客だった。白装束の現地の人たちの観客数は少なかったが、現地勤務の欧米人が多数会場に詰め掛けた。中でも、ここに出稼ぎにきているエチオピア人がスタンドの雰囲気を楽しく盛り上げてくれた。エチオピア選手が出場する日は、レース数時間も前から彼ら独特の手拍子、掛け声でスタンドがにぎやかになる。

エチオピア人は、男女1500m、女子3000mで優勝したときは大変な盛り上がりだった。母国選手らの応援が終わると、他の種目には興味がないのかそそくさと退場。かれらの応援は楽しい演出効果満点だった。

フライング一発失格ルール適用、

今年からIAAF主催大会はフライング一発で失格の新ルールが適用された。このため男女60m予選で2名、準決勝1名、男子60mhの予選、準決勝で3名、合計6選手が新ルールで失格になっている。やはり、レースが少ない割に失格選手数が多かった。中には、失格を告げられ分けがわからなかったような「戸惑い」選手もいた。スプリント系の種目において、新ルール適応が選手に微妙な心理的なプレッシャーを与えたことは明瞭だ。このことからも全般的にスプリント系のリアクションが遅くなったため、記録が低調になったのかもしれない。しかし、失格した選手の中に優勝候補クラスの選手は含まれていなかった。新ルール適用で多少の不慣れを感じた選手もいただろうが、全般的に大きなトラブルもなかった。混成競技は従来通りのルールで施行された。新しく開発されたビデオ計測装置を使って、男女走り幅跳び、三段跳びの結果を瞬時に電光掲示板に表示した。

 
(10年月刊陸上競技5月号掲載)
(望月次朗)

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