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男女エチオピア優勝、女子でコース新記録

4月11日、第34回パリ・マラソンは、エチオピア勢が男女でダブル優勝。男子はマラソン2回目の新人タデッセ・トラ(エチオピア、23歳)が並みいる強豪を振り切り、自己記録を9分以上短縮する脅威の2時間6分41秒で初優勝。女子はアステデ・バヤサ(エチオピア、23歳)が2時間22分04秒の自己新、コース新記録で2連覇。

9度と肌寒いシャンゼリゼを9時にスタート。強い向い風のため、緩やかな下り坂にも先頭集団は最初の5kmを15分07秒のスローペースで入った。次の5kmが14分57秒とヴァンサンの森に入る時点から徐々にペースアップ。15km通過が45分08秒。優勝候補のステファン・キビット(ケニア、24歳)、ザンバラ・イェゲツ(ケニア)、トラックからマラソンに転向したハイル・メコネン(エチオピア、30歳)らの大きな先頭グループだ。メコネンとダニエル・コスゲイが給水で足元を乱れさせて転倒するものの、ハーフ通過が予定の63分だった。

パリ・マラソン主催者は、国内最大の日刊紙、スポーツ紙の「レキップ」傘下にある。車レースの「パリ〜ダカ」、自転車レースの「ツール・ドゥ・フランス」など、大きなスポーツイベント興行会社のひとつ。この会社のポリシーは、ロンドンとは対照的に利益追求だ。スター選手は金が掛るから呼ばない。レースに貪欲な若い選手を手ごろな出場料で招待して好結果を生んできた。

今年もこの手が大当たり。勢いの付いたエチオピア選手の活躍が止まらない。ハーフを過ぎると1km3分ペース。30kmを1時間22分50秒で10数名の選手が一団となって通過。こうなると消耗戦。昨年ベルリンで3位、優勝候補の一人ネガリ・テルファ(エチオピア、)、初マラソンだがハーフで58分52秒という歴代8位のスピードを持つウィルソン・キプサング(ケニア、28歳)、2009ローマで優勝したベンジャミン・キプトー(ケニア)らを含む選手ら8選手が残った。34km通過してから疲れが見えて徐々にブレークした。

最後の5kmを残して、トラ、アルフレッド・ケーリング(ケニア)、ウィルソン・キプサング(ケニア)、ベンジャミン・キプトゥー・コウルム(ケニア) ら7分台の実力を持つ選手の一騎打ちのサヴァイバル戦。最後の2kmでトラが仕掛けた。懸命に食い下がるケリング、キプサングを簡単に振り切ってそのままゴール。

トラは、「調子が良かったので最後まで走ればなんとかなると思っていた。フルマラソン経験が少ないだけに後半の走りが不安だった」と大喜び。賞金600万円を獲得した。7か月前の初シカゴマラソンで2時間15分48。今回は2回目のフルマラソン。これまで経歴は、NYハーフを08,09年優勝。トラックでエチオピア代表経験はないが、07年19歳で27分4秒89、ハーフ59秒49の記録を持つ逸材だ。11位までがサブ2時間10分だった。

一方、女子優勝者のアツエデ・バヤサ(エチオピア、23歳)は、昨年だした2時間24分42秒の自己記録を大幅に破る2時間22分04秒で2連覇。3月に開催されたパリ・ハーフで優勝。レース前、「調子は昨年より良いので、2連覇、自己新記録、2時間23分05秒のコース新記録が目標です」と意欲満々だった。

ハーフを72分設定。バヤサがスタートから積極的なレース展開で引っ張った。バヤサはティルフェ・ツガイェ、グルム・ウォキツ・アヤヌ、ハユル・メコネンらのエチオピア集団の先頭。その集団の背後に、地元期待の昨年NYマラソン3位、クリステル・ドネ(35歳)は夫がペーサーでフォロー。フランス新記録を目標に掲げて慎重に走る。

バヤサはスタートから他を圧勝。2連覇、7年ぶりの大会新記録を更新、今季この時点で世界最高記録、自己新記録も大幅に破る快挙だった。「コース新記録を達成して優勝して大変に嬉しい。」

2位のドネは夫と2人で両手を挙げてゴール。自己記録を1分短縮、公約通りフランス新記録を樹立して大喜び。3位から6位までがエチオピア選手だった。

日本勢は高橋徹(富士通)が2時間25分30秒で34位、大久保絵理(アミノバイタルAC)が2時間38分54秒で11位に入った。

 
(10年月刊陸上競技6月号掲載)
(望月次朗)

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