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カムバックはキツイ!10000m無敗のケネニサ・ベケレ復活なるか

2003年ヘンゲロGP10000m。無名のケネニサ・べケレが「皇帝」ハイレ・ゲブレセラシをスプリント争いで破り衝撃の10000mデビューを果たした。以来、無敗を誇っている。アテネ、北京五輪連勝、世界クロカン16個の金メダル獲得、世界選手権10000m5連覇、5000,10000m世界記録保持者の史上最強長距離、クロカン選手と呼ばれている。ところが、ベケレは2009年9月4日ブリュッセルGP10000mで優勝、2010年1月9日恒例のグレート・エジンバラ・クロスカントリーで4位になったのを最後に右足ふくらはぎを痛め、昨シーズンは完全休養。復活が難しいと噂されてきたが、3月半ばジョギングから練習を再開。ベルリン世界選手権に続く5000,10000mダブル連覇が目標だと断言。言葉少なかったが、ストレートに近況、今シーズンに向けての希望的な観測を述べた。

14kgの体重から7kgまで落とした

1月末にベケレ邸で昼食を前後にして話した。顔もふっくら「ふくらはぎが良くなったが・・・、まだトップシェイプで走れる状態ではない。今シーズンのことなんか全く考えもできない状態だ」と苦笑していた。その時の状態から比較すると、今回5月2日に逢った時はホホも少しは削げ、心なしか精悍な表情が戻ってきた。やはり少しは落ち着きを取り戻した様子だった。

‐練習を再開したと聞いたが。
ベケレ‐(笑いながら)だれから聞いたの。まだまだ、ジョギングの域を出ていないよ。

‐約1年半、ベルリン世界選手権後のチューリッヒGP5000mで優勝以来レースから遠のいたが…、昨シーズン完全休養。その時の心境は。
べケレ‐走りたくても、ふくらはぎの痛みで満足に走れない状態だったので仕方ないこと(苦笑)。建築中のホテル、郊外のセルタで始まったスポーツセンターの建設などで忙しかったのでビジネスに集中できた。

‐市内のホテルも完成近いですね。
べケレ‐外側はほぼできあがったが中身はこれから。今秋中に完成してほしいが…、ここにきて25%以上のインフレ状態が続き、猛烈な早さで物価が高揚。建材価格が急上昇したため、ここ10年間の建設ラッシュからスローダウン。方々で建設中の物件が資金難でストップ。これまでエチオピアの建設業は年に12%ぐらいの効率で伸びてきたのですが、これからは大変なことになりそうな気配。

‐いつから本格的な走りができるようになったの。
べケレ‐練習が再開できたのは3月半ばから。これまで約6週間走っているが、ふくらはぎの痛みは今の状態では感じられない。

‐トラック練習は。
べケレ‐まだ、まだそんなことができる状態ではないので、セウタ(市内から車で北西に約20分の距離)の森の中で軽く走っている程度です。

‐現状で最も難しいのは。
べケレ‐最も難しいのは、ベストから14kgまで増えた体重を6週間で減量できたのは7kg。体重をあと7kg落とすのは、肉体的にはさることながらまだ故障個所を注意しながら練習している状態。いろんなことも含めて予想外に精神的にかなりキツイ!

‐レース復帰予定はいつになるのか。
べケレ‐全く現状では考えられないことだが、練習も通常のコンディションに戻れば、世界選手権前、やはりどこかで1、2度レースに出て自分の状態を見たいし、レース勘も取り戻さなければならないと思う。

‐でも、最近10000mのレースが極端に少ない。トップのエチオピア長距離選手は世界選手権標準記録を破るためにユージンで開催するダイヤモンドリーグ10000mレースに大挙して出場するとか。
‐ぼくは前回優勝していて出場権を持っているのでその心配はないが…、できれば世界選手権3週間ぐらい前にどこかで調整レースに出たい。

‐イイ状態に戻すためどのぐらいの期間が必要ですか。
べケレ‐今回は過去にない経験だから、毎日を確実に消化する実績がなければ先を読めない状態。もし、現状を継続できれば、あと2カ月ぐらいは必要ではないかと思う。でも、これも推測の域を出ないね。

‐もちろん、世界選手権10000m6連覇が目標ですね。
ベケレ‐もし、全ての調整がうまく行きトップシェイプに持って行ければ、5000、10000mの2冠獲得を狙いたい。

‐エチオピア陸連が80名のトップ選手から約2000万ブル(約9600万円)を集めて、ナイル川に「ルネッサンス」ダム建設基金として政府に提供するキャンペーンが行われているが、あなたはハイレに次ぐ高額の150万ブル(現金で240万円、残りが国債、約720万円)を払うことに決まったとか。これをどう思いますか。
べケレ‐競技場の会合には出席できなかったが、弟のタリクからいろんなことを聞いている。これはエチオピア人の誇りと将来を掛けた国家的なプロジェクト。総ての国民ができる範囲でナイル川に掛けるダム建設資金を援助するものです。陸連が音頭を取って、選手、コーチら合計80人から2000万ブルを集めて政府に提供するダム建設資金を捻出するプロジェクトです。

(注:選手の最高金額は、ハイレの200万ブル、シレシ・シヒネ、ティルネッシュ・ディババ夫妻はベケレと同額、メサレット・ディファー、ゲブレ・ゲブレマリアム100万ブル、協会300万)

 
(2011年月刊陸上競技6月号掲載)
(望月次朗)

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