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世界陸上女子やり投げ
マリア・アバクモワ、故障を乗り越えて逆転の一投

バルボラ・スポタコワは、「クレイジー!凄い投げ合いだった!こんな試合は始めて!多分、史上最高ハイレベルな戦いのひとつだろう。正直に言うと、わたしの世界新記録を破られるのじゃあないかと心配しました。」と、世界記録保持者に言わしめた熾烈な大台70mの攻防戦だった。

最初に仕掛けたのは、マリア・アバクモワ(ロシア、25歳)だった。2投目にいきなり71.25mの大台に乗せてライヴァルにプレッシャーを掛けた。アバクモワは、「なぜあんなにヤリが飛んだか不思議だった。競技場に流れる風に乗って高く上がって飛んだとしか考えられない。あんなにヤリが遠くに飛ぶとは予測していなかった。」3投目をパス、4回目ファウルだった。一方、優勝候補のスポタコワ(チェコ、30歳)がコンスタントに68m前後にヤリを落とすが70mに届かない。5投目、スポタコワが満身の力で投げたヤリは、気流に乗ったように高く上がってアバクモワの記録を上回る71.58m地点の芝生に突き刺さった。一挙に、逆転首位に踊り出た。目の前で逆転されたアバクモワだが、この時冷静に首位を奪うことを考えたと言う。

予選が良くても決勝に結果が出ず、またはその逆が良くあること。北京五輪で使ったトレーナーのズボンは「幸運」をもたらすと思い使用したのが良かったかも。でも、まさか2度とも70mを越してあんなにうまく遠くに飛ぶとは!夢にも思わなかった。71.99m!自己新記録、大会新記録、歴代2位の好記録だ!

「今日の勝利は二重の喜びです。最初は歴代2位の好記録を出したこと。次に右足の踵の故障を克服して競技を続けられたことです。世界選手権前、約1カ月歩行が困難なほど右足の踵が痛かった。わたしもコーチもX線でチェックするのは怖くて中止。テグに飛ぶかどうか迷ったほど足の状態が悪かった。予選はなんとか通過したが、足が痛くなった。決勝前、テーピングで故障の踵をギブスのように固めて出場。ただ、競技中気に掛ったのは故障個所が悪くなることだった。これまで故障を越えて競技を続けられた背景には家族、友達、コーチ陣のバックアップがある。勝ったことが分かった時、足が痛くてウィニングランを止めたかったが、母親がぜひ見たいのでやってくれと言っていたのを思い出したので走りました」

 
(2011年月刊陸上競技10月号掲載)
(望月次朗)

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