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望月次朗 のDL&世界リレー 取材記
~「雑ネタ」「裏話」を気の向くままに紹介~

世界リレー取材で帰国
日本初開催となる世界リレー横浜大会を取材するために、パリからコペンハーゲン経由で成田に飛んだ。この大会は、2014年、15年、17年の過去3回ともバハマの首都・ナッソーで行われてきたが、バハマ新政権が2019年大会の開催を返上したため、横浜で行われることになった経緯がある。 しかし、バハマから遠路はるばる横浜にやってきた友達は、「新政権は考えを変え、世界リレーをバハマに招へいしたいようだ」と言っていた。筆者が日本で陸上競技の取材をするのは、 確か2007年の大阪世界選手権以来だろう。機材がいっぱい詰まったカメラバッグは重い。正確に計量したことはないが、たぶん25kg以上はあろうか。撮影機材の新品価格は、簡単に自動車1台を購入できる金額。30年ほど前、イスラエルのホテルの部屋に機材を残して外出したところ、そっくり盗まれた経験がある。それからは、飛行機のチェックインでもバックパックに入れ替えて、手荷物扱いにして機内に持ち込むことにしている。幸い、今までバックパックの重さをチェックされたことがない。目的地の飛行場に到着すると、今度は機材をカメラバックにすべて移す一連の儀式≠しなければならないが......。 フランス人の友人が世界リレーの「フォト・チーフ」として国際陸連(IAAF)から依頼されて横浜にやってきた。「フォト・チーフ」の仕事は楽とは思わないが、世界で最も難しい仕事の1つとは考えられない。日本は、世界で最も優秀なカメラ製造国にもかかわらず、世界リレーのカメラマンを仕切る「フォト・チーフ」が務まる人材が国内で見つからないらしい。友人からその話を聞いて「エッ ! ?」と思った。英語ができる人、どこかの会社の人でなければいけない、フリーランスではダメなど、かなり難しい問題があるのだろううか。それより地球の反対側の国から往復航空券代、宿泊、食事、日当などを支払ってまでも「フォト・ チーフ」を招へいしたほうが簡単なのかもしれない。隣国の中国の若い友人は「新華社」のカメラマンだが、陸上競技や水泳の世界選手権、毎年行われるダイヤモンドリーグ(DL)上海大会、2016年のリオ五輪な ど「フォト・チーフ」の仕事をうまくさばいている。

パリ→上海→パリ→ストックホルム
日本からパリに戻って2日後、DL上海取材のため、パリから直行便で飛んだ。早朝に上海浦東国際空港に到着。通常、到着時間の一報を入れておくと車でピックアップしてくれるが、その日は土曜日で人も少ないし、メトロは1回の乗り換えで市内の上海体育場駅まで約1時間で行けるので、週末の乗客を眺めながらのんびりと移動した。地上に出ると、中央に巨大な競技場と、円形の巨大な室内競技場が目の前に見える。しかし、一昨年から周辺に新しい建物が建築中だったり、リフォーム中だったり、いたるところが工事中だ。この競技場内にホテルがある。DL上海出場選手、コーチ、エージェント、記録を計測するオメガの技術者、ジャーナリストなど、すべてDLに関わる人たちが、競技場内のホテルに一括して滞在する。便利で、家族的な雰囲気がある大会だ。知人のアメリカ人のカメラマンの部屋に荷物を預け、このホテルの顔見知りの送迎専門の係に、まず試合終了後に空港までの移動の確保を頼んだ。というのも、上海に宿泊予定はなく、競技が終わった3時間後にはパリ行きの便に乗る予定だ。 シーズン開幕2戦目にして、男子100 m、5000m、400m ハードル、やり投などで今季世界最高記録が出た。詳しくはDL上海の報道記事を参照してほしい。上海滞在は約16時間。0時15分発のフライトでパリにとんぼ返りした。5月30日、今季初の欧州DLが1912年のストックホルム五輪の舞台となったストックホルム・オリンピック・スタジアムで行われた。この競技場は、日本のマラソン、駅伝の創立者の故金栗四三と、短距離の三島弥彦が、日本人で初めて参加した五輪のメイン会場だ。外装などは建設当時そのままの形で保存をしてある。DL開催10周年を控え、また昨年は男子走幅跳でファン・ミゲル・エチェバリア(キューバ)が追い風参考ながら8m83の大ジャンプを決めたため、多少ピットを長くしたらしい。 しかし、残念なことに男子走幅跳や、山本聖途(トヨタ自動車)が出場した男子棒高跳が始まる午後5時頃からから冷たい風が吹き、小雨が降り出した。幸い小雨はすぐに止んだが、冷たい風はその後も止むことはなかった。筆者の長い取材経験の中でも最悪のコンディションの1つだった。エチェバリアは寒さと周囲の大きな期待の影響か、最後まで助走に元気がなく、最終跳躍でやっと8mを跳んで終了した(8 m12 /+2.3で2位)。一方で地元期待、男子円盤投のダニエル・ストールが絶好調だ。ファウルしたものの73m付近に落下する1投があり、スタンドから大歓声が起きた。彼は「今日は高く上げ過ぎたので距離が延びなかった。世界新記録は出る。時間の問題だ。今日は、自分では60%の力で勝ったような気がする」と、身長201cm、体重 145kg スウェーデンとフィンランドのハーフという巨漢から目が離せない。


ローマで見た米国の大器たち
DLローマ前日の記者会見で、男子200mに出場するノア・ライルズ(米国)が、同席したマイケル・ノーマンを前にして大いに吹いた。「世界にショックを与える走りを見せる!」と。メディア向けにあおってきた。彼は、D L上海100mで60m室内世界記録保持者のクリスチャン・コールマン(米国)を9秒86(+ 0.9)の同タイムながら破って優勝。ライルズが同じ21歳のノーマンに向けてプレッシャーをかけてきたのか、よほど自信があったのか大口を叩いた。ところが実際のレース後、ライルズは「スタートが最悪だった!」と悔やんだ。対するノーマンは、「自分の走りに集中した」と言い、5レーンから流れるカーブを走り、ホームストレートに入る手前で1つ外側のライルズを抜き去る。残り50m付近まで1 m半ほどリードした。ここからライルズが目の覚めるたような、猛烈な加速でノーマンを急追したが、0.02秒届かず。ノーマンは今季世界最高の19秒70(+0.8)で優勝した。

 
(月刊陸上競技2019年7月号掲載)
●Photos / Jiro Mochizuki(Agence SHOT)

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